【味噌人】「桜なべ中江」四代目 中江白志さん

中江白志さん

\THE味噌人/

みそを愛し、みそ業界をリードする「ザ・味噌人」。
みそメーカーや関連企業、料理人など、
さまざまな業界の「ヒト」を取り上げます。

 

浅草吉原の粋な東京グルメ「桜鍋」は秘伝の味噌味が決め手
「桜なべ中江」四代目 中江白志さん

 

「桜鍋」とは、馬肉(桜肉)を使ったすきやき風の鍋料理のこと。
明治初期から続く東京の数少ない郷土料理の一つ。
桜鍋といえば「味噌味」が定番だが、
最初に味噌仕立てにしたのが中江の初代桾太郎さん。
明治38 年創業以来110 年の伝統を受け継ぐ「桜なべ中江」にリピーターが絶えない理由、
今、再び注目を浴びる「桜鍋」の魅力について、四代目中江白志さんに迫りました。
(聞き手/ ミソガール・藤本智子)

 

◆◆◆浅草で「桜鍋」が流行したのはなぜですか?◆◆◆

文明開化の頃、「桜鍋」は精力を増強させるといわれていたことから、吉原など色街の近辺で桜鍋を扱う店が多く、遊郭へ繰り出す前の腹ごしらえにと大変にぎわっていたそうです。馬肉の色が桜色であることや、桜の咲く時期の馬肉が特においしいとされていたことから、馬肉は「桜肉」と呼ばれるようになりました。ハイカラなグルメとして当時の浅草近辺には、「桜鍋」のお店が20 軒以上ありましたが、関東大震災や東京大空襲の影響で次々閉店し、現在残っているのは「中江」のみとなってしまいました。それは、初代が桜鍋の割下に「味噌ダレ」を加えて、コクを出すことに成功したからです。今も変わらぬ場所で、秘伝の味噌味を引き継いでいます。

 

◆◆◆経営のご苦労や、意識していることは何ですか?◆◆◆

私が店を引き継いだのはバブル経済崩壊直後。当時は無駄をなくし、とにかく今を乗り越えようと必死でした。しかし生き残るためには、工夫や努力も必要ですから、店を改装したり、馬油を使った化粧品を開発したりと、新しい時代のエッセンスも取り入れていきました。また「桜肉」は、普段はあまり食べない特別な食べ物のため、お客様の期待を裏切らないよう、正しい情報発信も必要です。最近は季刊誌を発行し、SNS やブログを利用するなど、積極的に情報発信を行っています。

 

◆◆◆中江の「桜鍋」の特徴、魅力は何ですか?◆◆◆

一番は「桜肉」へのこだわりです。中江専用の桜肉は、純国産。穀物中心のエサを食べ丁寧に育てられた馬です。普通の食用馬肉は1 ~ 2 歳で食べますが、うちでは6 ~ 8歳まで育てた馬肉です。生きながらに熟成し、深い旨味とほのかな甘味が増していきます。桜肉のカロリーは牛肉の半分以下なのに、高タンパクで鉄分が豊富とあって、最近では、女性ファッション誌でも取り上げられ、若い女性のお客様にも多くご来店いただくようになりました。コラーゲンたっぷりの桜肉を食べた翌日はお肌にハリが出ます!

 

◆◆◆お料理だけでなく、雰囲気も楽しめると評判ですね。◆◆◆

築90 年を越えるお店の建物は、関東大震災後に再建されたもので、国の有形文化財に登録されています。 深川、浅草を襲った東京大空襲では、下町中が火の海に飲み込まれましたが、うちは奇跡的に焼け残りました。また建物だけでなく、飾らぬおもてなしが評判で、お客様同士が気さくに話せるような、昔ながらの下町情緒を味わっていただけるのも中江の魅力です。

 

◆◆◆今後について教えてください。◆◆◆

先日は長男が、小学校の卒業式で突然、全校児童を前に「中江の店を継ぐ」と宣言してくれました。今は新しいことにチャレンジしながらも、しっかりと店を受け継いでいける体制づくりに力を注ぎたいと思っています。「吉原」というと歓楽街のイメージが強いのですが、芸者発祥の地、江戸文化の発信地ともいえる場所です。残念ながら「江戸の粋」は消えつつありますが、老舗料亭「金村」を「桜なべ中江別館金村」とリニューアル。「落語会」や「利き酒会」を開催するなど、地域との連携を強化し、古きよき江戸文化を次世代へ受け継いでいきたいとがんばっています。

 

【プロフィール(なかえしろし)】
1963 年生まれ、東京都出身。
大学卒業後約2 年間はサラリーマンとして会社勤務。
1987 年に若干24 歳の若さで「桜なべ 中江」の四代目となる。

 

馬刺しアップよく肥えた食肉馬の肉は深い旨味とほのかな甘味が特徴

桜鍋煮えてる赤身はサッと火を通し、脂身はゆっくり飴色に透き通るくらいまで煮込むのが食べ頃

桜店内桜なべ中江の店内

外観夜桜なべ中江
東京都台東区日本堤1-9-2 TEL03-3872-5398
◯営業/平日 17:00 ~ 22:00 土日祝 11:30 ~ 21:00
※ランチ 土日祝11:30 ~ 13:00
◯定休日/月曜日
※「桜なべ中江 別館金村」は会員制・完全予約制

 

Sakura-nabe is a horse meat hot pot, a local specialty of Tokyo.
Shiroshi Nakae, the fourth generation owner of Sakuranabe Nakae, established in 1905,
inherited the exquisite secret miso sauce that made the restaurant a success.
The horses are grain-fed and raised until they become six to eight years old,
which is longer than usual, to allow the meat to mature.

 

—–取材を終えて—–

2ショットとろける桜肉と濃厚な甘口の味噌だれのおいしさには感動。
そして、まるでタイムスリップしたようなぬくもりのある店内は
長い歴史とドラマを感じずにはいられません。
時代が変わっても変わらぬ味と伝統、
これからもずっと続いてほしいと思いました。

〈INTERVIEWER〉
藤本智子 Tomoko Fujimoto
ジャパン味噌プレス編集長、ミソガール

 

ABOUTこの記事をかいた人

藤本智子

藤本智子(ふじもとともこ) 1985 年生まれ、横浜市在住。アパレル販売員、読者モデル、ファッション雑貨店マネージャーを経て、2011 年ミソガールとして「365 日味噌活宣言」をし、みその普及啓蒙活動を開始。2012年「みそソムリエ」取得。2014 年「ジャパン味噌プレス」創刊。2015年「ミラノ国際博覧会日本館サポーター」「朱鷺米応援大使2015」(佐渡市)に就任。著書に『みそまる』(宝島社)、『みそまる 作りおきみそ汁83のレシピ&アイデア』(二見書房)、『手軽に作れて、キレイに効く! みそまる』(主婦と生活社)等がある。2016 年より「中央情報専門学校」非常勤講師。2016年10月株式会社ミソド設立、代表取締役。一般社団法人みそまる普及委員会 理事。