【味噌人】広島大学名誉教授理学 博士・医学博士 渡邊敦光 先生

渡邊敦光先生2

\THE味噌人/

みそを愛し、みそ業界をリードする「ザ・味噌人」。
みそメーカーや関連企業、料理人など、
さまざまな業界の「ヒト」を取り上げます。

 

講演

味噌は日本古来の最強サプリ
「日本人はごはんと味噌汁に戻ろう」を提唱
広島大学名誉教授 理学博士・医学博士 渡邊敦光 先生

 

味噌は、古くから「医者要らず」といわれるほど、
健康的で日本人の体質に合った食べ物です。
味噌博士こと、広島大学名誉教授の渡邊敦光先生は、
20 年以上にわたる研究から、
味噌のさまざまな機能性について実証されています。
「味噌力」の秘密に迫りました。
(聞き手:ミソガール藤本智子)

 

渡邊敦光先生

 

◆◆◆これまでの研究を通して、味噌には
どんな効能があるといえますか?
◆◆◆

マウスやラットを使って共同研究者たちと行った長年の研究から、味噌には、がんをはじめ、高血圧、脳卒中、放射能などから体を守る働きがあることを実証してきました。そのほか美肌効果、アンチエイジング、整腸作用など女性にうれしい効用もたくさんあるといわれています。

 

◆◆◆味噌力すごいですね! でも、塩分を
気にする人も多いと聞きますが…。◆◆◆

味噌汁1杯の塩分量は約1.2gですが、これは他の食品の1 回摂取量と比べても少ないほうです。さらに私たちの研究では「味噌の塩分は食塩単体よりも胃がんの発生率が低く、血圧も上昇しない」という結果が出ました。日本人は塩分摂取量が多いわりに血圧が低く、世界トップクラスの長寿国であることに研究者たちが注目しています。そしてその一因は、味噌などの発酵調味料から塩分をとっているためだと考えられています。それでも気になる人は、ダシをしっかりとる、カリウムの多い緑黄色野菜や芋類、ワカメなどを味噌汁の具にするなどすれば、塩分がより体の外に排出されやすくなります。

 

◆◆◆今は2人に1人ががんになる時代と
いわれていて、ちょっと不安です。◆◆◆

わが国では食塩摂取量の減少により胃がんの発生は少なくなっていますが、一方では大腸がんや乳がんといった西欧的ながんや生活習慣病が増加し続けています。これは、1955 年にアメリカと締結した余剰農産物処理法案により、「米」から「パン」へと日本人の食生活が意図的に変更され、同時に肉や油の摂取量が急激に増えたことが理由の一つとして挙げられています。がんリスクを高める要因は「食事の質」です。特に幼少期の食生活は、がんの発症に大きく関係するのです。

 

◆◆◆味噌の研究を始めたきっかけを教え
てください。◆◆◆

ともとは発生生物学が専門でしたが、味噌との出会いは突然にやってきました。長崎の被爆医師、秋月辰一郎先生(享年89 歳)が、自らも被爆しながら負傷者の救護活動にあたり、毎日「玄米とワカメの味噌汁」を患者らに食べさせたところ、いわゆる原爆症にならずにすんだという話があります。チェルノブイリ原発事故直後に欧州各国でこの話が紹介されると、日本の味噌が大量に輸出されました。秋月先生の著書『体質と食物 健康への道』(クリエー出版)には、「原爆症が出なかった原因の一つは『わかめのみそ汁』であったと確信している」とあり、さらに「みそは科学以前のものであった。しかも科学によって明かされるものである」とも記されている。この実体験に基づく話を実証してほしいと依頼され、私は味噌の研究を始めました。正直、最初は半信半疑でしたが、研究を始めて驚きました。

 

◆◆◆味噌には、放射線による障害を防ぐ
効果があるのですか?◆◆◆

マウスに普通のエサと味噌を混ぜたエサをそれぞれ1 週間与え、放射線を照射。3 日半後、小腸を調べると、味噌エサを与えたマウスのほうが、より多くの小腸組織が再生されていることがわかりました。中でも、180 日熟成させたものの効果が、より大きかった。また、事前に味噌エサを与えていたマウスだけが放射線による障害を防ぐことができたという事実から、普段から味噌汁を飲むことが大切であるとわかりました。

 

◆◆◆講演や執筆など、幅広い味噌の啓蒙
活動の中で、一番伝えたいことは?◆◆◆

味噌は1300 年もの間、日本人の健康を支えてきてくれた素晴らしい食品です。もちろん「味噌は○○を予防する、○○を改善する」と言い切れない部分があるのも事実。けれども、おいしい味噌汁を食べてホッとしたり、幸せな気持ちになったりすることに、科学的な根拠は要りません。日本の子どもたちのため、未来のために、今こそ日本人に一番合った「ごはんと味噌汁」の文化を復活させたいと思っています。

 

◆◆◆ 「ごはんと味噌汁」の食生活によって
どのような効果があるのですか?◆◆◆

お互いに足りないアミノ酸を補え、さらに味噌汁の具材の栄養もまるごととれるので、栄養学的にも「ごはんと味噌汁」は最高の組み合わせといえます。近年、味噌の消費量は下がる一方、サプリメントの補給などで健康維持に余念がない人も多いようです。しかし本来は食事でバランスよく栄養をとることが一番です。まさに「味噌は日本古来の最強サプリ」といえるでしょう。

 

◆◆◆最後に、渡邊先生おすすめの「味噌活」
があれば教えてください。◆◆◆

全国にはまだまだあまり知られていない、個性豊かでおいしい味噌がたくさんあります。どんな食材とも相性がよいことが味噌の魅力の一つでもありますので、味噌汁の具はこれとは決めずに、いろいろ楽しんでみてください。ピーマンやトマト、ポテトチップス、鯖の水煮もなかなかイケますよ。

 

味噌力

「毎日の味噌汁で
強い体をつくる
味噌力」
発行/かんき出版
価格/ 1300 円(税別)

 

 

【プロフィール(わたなべひろみつ)】

1940 年福岡県生まれ。熊本大学理学部卒。
九州大学大学院博士課程理学研究科修了。
理学博士、医学博士。広島大学原爆放射能医学研究所助手を経て、
1996 年教授に。欧米で放射線生物学の研究を重ね、
2004 年に退官後も、名誉教授として研究を続行。
著書に「味噌力」(かんき出版)がある。

Hiromitsu Watanabe, a professor emeritus at Hiroshima University, has been researching the functionality of miso for over 20 years. Miso is effective for health such as prevention of cancer, high blood pressure and lifestyle-related diseases. Miso has a skin-beautifying effect as well. He says that we don’t have to worry about the salinity of miso soup, but if worried, making miso soup with foods containing a high amount of potassium such as green and yellow vegetables, potatoes and wakame seaweed helps remove the salt from body more easily. He recommends that people go back to the style of meal consisting of rice and miso soup as soon as possible.

ABOUTこの記事をかいた人

藤本智子

藤本智子(ふじもとともこ) 1985 年生まれ、横浜市在住。アパレル販売員、読者モデル、ファッション雑貨店マネージャーを経て、2011 年ミソガールとして「365 日味噌活宣言」をし、みその普及啓蒙活動を開始。2012年「みそソムリエ」取得。2014 年「ジャパン味噌プレス」創刊。2015年「ミラノ国際博覧会日本館サポーター」「朱鷺米応援大使2015」(佐渡市)に就任。著書に『みそまる』(宝島社)、『みそまる 作りおきみそ汁83のレシピ&アイデア』(二見書房)、『手軽に作れて、キレイに効く! みそまる』(主婦と生活社)等がある。2016 年より「中央情報専門学校」非常勤講師。2016年10月株式会社ミソド設立、代表取締役。一般社団法人みそまる普及委員会 理事。