はんなり京都生まれの優雅な白みそ

「関西白みそ」(本文中「白みそ」)とは、京都を中心に滋賀や大阪など関西地区でつくられている白みその総称です。華やかな歴史と文化が受け継がれる京都で、京料理とともに磨かれ発展してきました。上質な米を大豆の約2倍使い、こっくりと甘口で薄塩、うっとりするほど美しい色合い…、いかにも王朝貴族好みの優雅な白みそ。あなたの舌がキュン♡とすること間違いなし!

西京味噌取締役・工場長 大槻直人さんに聞く!白みそとは

まったりとした甘みと、鮮やかな絹のようななめらかな仕上がりが特徴の「白みそ」。塩分は5%前後と、一般的なみその約半分。長期保存には向かないものの、他のみそにはない味わいと汎用性の高さで、全国的に愛用されています。「白みそ」といいますが、実際はクリーム色に近い色合いです。つくり方は通常のみそとは大きく異なる短期熟成型。酵母や乳酸菌などの微生物の働きを利用せず、麹の「酵素」のはたらきで熟成させます。つまり、原料の質がそのままダイレクトに製品に影響するため、原料の選別には気が抜けません。

色の明るさとなめらかさを出すため、米は精白度を高くし、大豆は脱皮して使用。天気、気温、湿度にも左右されるため、蓄積したデータやコンピューターの制御など機械だけに任せるのではなく、職人の五感で判断し調整を行います。煮大豆と塩と混合した米麹を合わせ、撹拌機などで搗き潰してから桶に仕込みます。一般的には、50℃前後に保温しながら熟成させる「熱仕込み」で1週間程度寝かせます。この間、お米のデンプンは麹の酵素によって糖化し甘味をぐんぐん増していきます。最後に漉し機にかけ、すりみそにして完成です。綾部市にある西京味噌の工場「丹波醸房」では、容器詰めしたあとも目視で色味などをチェック。日々製品検査を行い、その結果を即座に製造現場へフィードバックすることで、徹底した品質管理を行っています。

伝統と革新を続ける西京味噌

西京味噌の母体である本田味噌本店の創業は約200年前の江戸時代。初代・丹波屋茂助さんが麹づくりの腕を見込まれ、宮中料理用にみそを献上したのがはじまりとされ、以来、「禁裏御所御用達」であったという格式高いみそ屋さん。「“みそ屋といえる商売せい”というのが、代々伝えられてきた本田家の鉄則。おいしいみそを安定供給することが仕事です」と、専務取締役の本田純也さん。高校時代をフランスで過ごし、卒業後は神戸の大学へ。「当時は、家業を継ぐ気はなく、あまりみそに関心をもっていませんでしたが、毎年お正月には“真っ白なキャンパスに夢を描くように”と、家族全員で雑煮をいただいたのが懐かしい」と笑顔で話しました。

25歳の頃、現社長の父、本田茂俊さんの誘いで繊維メーカーからみその世界へ。数年間の工場勤務を経て、現在は営業を担当。「味、品質、製法を変えることなく、伝統を守ることは大切。でも、時代の変化に伴い消費者ニーズも変わるので、積極的に新しい魅力を発信していきたい。白みそを通じて、伝統的な京都の味を楽しんでほしいですね」と純也さん。イチオシトレンドを尋ねると「ポークの西京漬け」と即答。「西京漬けといえば、鮭、銀鱈など魚を思い浮かべる方が多いと思いますが、肉との相性も抜群。みそをミクロン単位で微粒化したみそ漬けに最適なみそを開発したところ、大好評。都内でも取り扱い店舗が増えています」。

 

京の文化とともに育ってきた白みそ

「醤」「未醤」は、中国より伝わったみそのルーツとされるもので、平安京には、すでに醤や未醤店があったという。平安時代の貴族たちは、醤や未醤をそのままつけて食べていたが、美味探求心の強さから、調味料の軸となる「みそ」を考え出した。それが、現在の「白みそ」のルーツと考えられている。公家・宮廷文化の中で育まれた白みそは、ハレの場に欠かせない調味料として定着していった。室町時代に出された書籍『山科家礼記』には、「味噌屋役」「味噌公事」という、みそ屋にかけられた税のことが出てくる。それくらい、みそ屋が繁盛していたのである。白みそは、甘味料として京菓子にも使用され、代表的なものが「葩餅」である。今宮神社の「あぶり餅」は、きな粉をまぶし、竹串に刺した親指大の餅を炭火であぶり、白みそ仕立てのタレをつけたもの。

また、茶事に欠かせない懐石料理には、必ず汁が出され、冬は白みそ、夏は赤みそ、春秋は赤みそと白みその「合わせみそ」が使われてきた。山に囲まれ、海から遠い京都では、塩は貴重であったため、薄味で上品な味わいが定着し、京都の味をつくりだしていった。尾張の織田信長が、はじめて足利将軍の料理を口にした際、口に合わないと怒り、慌てて料理人が田舎風の味に直し、ご機嫌を直してもらったという逸話が残されている。豆みそで育った信長には、まったりとした甘口が口に合わないのは当然の話で、みその地域特性を物語るエピソードとして語り継がれている。白みそが、広く京都の食卓に上がったとされるのは江戸時代のこと。文献で確認できるのもこの時代。それによると、白みその製造方法は、今も昔も大差ないと考えられている。明治維新によって天皇は東京に移ったため、「東京」に対して、京都は「西京」と呼ばれるようになった。京都から東京に移った人々は、京都の白みそのことを懐かしみ、「西京白味噌」と呼ぶようになったという。戦時中は、主食の米をたくさん使うため、贅沢品とみなされ、製造中止を余儀なくされたものの、終戦後いち早く復興を果たし、今やなくてはならぬみその一つとして名を連ねている。春は酢みそ和え、夏には茄子田楽、冬には風呂吹き大根など、四季を通して親しまれているほか、洋食やスイーツにも広く活用され、「SAIKYO MISO」の名で海外でも注目を浴びている。

葩餅

「葩餅」とは、京都でお正月にいただく伝統的な菓子の一つ。柔らかいお餅に白みそあんをごぼうとともに求肥で包んだお菓子。

京風雑煮

京都を中心とした関西圏の雑煮は、白みそ仕立て。具材は角が立たず円満に過ごせるようにと丸餅、かしら芋(サトイモの親芋)、大根。これらの色はすべて白。白は汚れのない清浄な色で正月にふさわしいとされる。

Shiro miso (white miso), a specialty of Kyoto, is a beautiful cream-colored, sweet, and low-sodium miso that has evolved alongside with the elegant cuisine and culture of Kyoto.

参考:「みそ文化誌」(全国味噌工業協同組合連合会)、「本田味噌本店と西京白味噌」(本田味噌本店)

 

 

 

 

ABOUTこの記事をかいた人

藤本智子

藤本智子(ふじもとともこ) 1985 年生まれ、横浜市在住。アパレル販売員、読者モデル、ファッション雑貨店マネージャーを経て、2011 年ミソガールとして「365 日味噌活宣言」をし、みその普及啓蒙活動を開始。2012年「みそソムリエ」取得。2014 年「ジャパン味噌プレス」創刊。2015年「ミラノ国際博覧会日本館サポーター」「朱鷺米応援大使2015」(佐渡市)に就任。著書に『みそまる』(宝島社)、『みそまる 作りおきみそ汁83のレシピ&アイデア』(二見書房)、『手軽に作れて、キレイに効く! みそまる』(主婦と生活社)等がある。2016 年より「中央情報専門学校」非常勤講師。2016年10月株式会社ミソド設立、代表取締役。一般社団法人みそまる普及委員会 理事。